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日記だよ

映画「オッペンハイマー」

見た。面白かった。

映画として面白いのか、アメリカ近代史の実写化だ〜聞いたことあるぞこれ!みたいな面白さなのか判断がつきかねる。歴史に疎い自分には虚実の境がわかんない感じの映画であるが、原子爆弾ってやつとそれを生み出した時代の空気感は、リアリティ高く描かれていると思う。ああこの頃の共産党の立ち位置ってこんな感じだったのかとか、当然戦火に覆われたヨーロッパ諸国に対するアメリカからの見え方とか。

演出として、三重の時間軸が重なって描かれていて、そこはわかりづらかったが、これは自分が人の顔の判別が弱いためであろう。メイクや雰囲気で同一人物の老若を描き分けていたり、小道具で時代感が描かれていたのかもしれないが、なかなか読み取れないので、「オッ、これはいつの話題かな」とわかんなくなることがしばしばあって、不倫相手とか共産党員の奥さんとかも区別がつかなくて苦労したが、映画よりは自分の問題という気がする。

アカデミアと軍事の距離感はやはり興味深いし、戦時に「権限を与えられる」というのが非常に大きなものなんだなと思わされた。フィクションの世界でたまに軍がバックにいるということで荒唐無稽な研究やプロジェクトを実現してしまってることがあって、本当にこんなことおきえるのか?  と思うけども、実際あったんですよとなると、そうですね、と納得するしかなく、その荒唐無稽が実際に行われたという事実を下敷きに映像化されたリアルさがある。

無茶を言われた軍の建設チームは大変だったろうな。秘密を守るために情報を分散させるんだ!って原則を軍の偉い人が言ってたけど、それこそ街を一つ生み出す総合的な生産力は膨大だろうし。とあんまり描かれない裏方の想像を膨らませたくなる。

実際の広島、長崎の描写を避けたんじゃないかと叩かれていた?  あるいは逆にアメリカの行為を倫理的な悪として描いてるんじゃないかとか、いろいろ賛否があったらしいけど、原爆の被害そのものをオッペンハイマー本人が目の当たりにしたわけではないし、軍の研究者がデータとして集めた凄惨な事例写真をお見せしましょう!って映画でもなさそうで、メッセージ性を強くしすぎるよりはいいバランスなんではないかなあ。倫理的な側面も、最終的にプラグマティックに大統領が「爆弾を落としたのは私だ」と断じていて、オッペンハイマー自身の感じる罪悪や悔悟はあくまでも個人の中のたらればの話に閉じ込められている演出に思えた。(てことはむしろもっと色をはっきりさせてもいいんじゃないか?って気もしなくはないが、そうすると疲れる映画になっていただろう)