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日記だよ

映画「イニシェリン島の精霊」

見た。あっという間だった。

わかりやすい映画ではないが、とっつきづらさはない。

穏やかなこの島に、死を知らせると言い伝えられる“精霊”が降り立つ。その先には誰もが想像しえなかった衝撃的な結末が待っていた…。

公式サイトのこの説明については全てが嘘っぱちだと断言できるが、映画はすごい出来で、情緒的な何かをひどく揺さぶられる。

筋書きについて全然理解できないが納得はする。きちんとパズルのピースがおさまるところにおさまったのはわかるんだけど、全体像は見えないままみたいな不思議な後味がある。きっかけは理不尽でわけのわからないもので、それでも噛み合ってしまえば回り始める。争いを決して肯定はしないが、一方で無限の停滞が絶望的にそこにあることも描かれている。コルトの行動は「覚悟を示す」自傷の繰り返しのようにしか見えず、動機は正直まったく見えてこないけど、位置付けは漠然とながら、わかる気がする。物語においても、当人の内心においても。

傑作の名に相応しい作品だと思うけど、今度もう一度見なければいけないという気持ちと、見ると悲しくなるので見たくないという気持ちがある。