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日記だよ

謎の店

仕事を終えてリビングに降りると真っ暗で、ソファに妻が寝ていた。うんうんうなされている。起こすと、「ネットであった男の人と遊びに行く夢を見た」という。不穏なやつかな、と思いながら先を聞いてみた。

 

「面白い店を知ってるんだ」と連れていってもらったそこは薄暗くて大勢の人がいた。そして談笑しながら自分の足の肉をむしって食べていた。腕にかじりついている人もいた。とても美味しそうに食べていてびっくりした。

低く音楽が流れている。

カウンターで店のマスターがお酒と食べ物を出してくれた。「しばらくお酒を飲んで音楽を聴いていると、気分良くなって、自分の肉を食べても痛くなくなるんだ」

連れてきてくれた男の人はニコニコしていて、自然な感じだ。よく来ているのだろうか。それにしては五体満足だけど。服の下は肉が削げ落ちているのかも知れない。

「さあどうぞ。最初は普通のおつまみがいいですよ。ここは何食べても美味しい」と料理を勧められる。

トイレはどこですか、あの棚の後ろにありますよ、ありがとうございます。

席を立ってそのまま店を出て逃げた。店を出たら必死で走った。別に追いかけられるとかそういうのはなかったらしい。

 

「危なかったよ。ナイス機転だった。何も食べてないから食い逃げではない」 

 

妻は自慢げに冒険譚を話してくれたが、だいぶ怖いやつだな、と思った。食い逃げかは心配しなくてよいんじゃないかな。