キッチンで食器を片付けていたら、ゴミ箱の影にさっと猫が隠れるのが見えた。
身を低くして移動しても、尻尾が立っているので動くと目に付く。
ゴミ箱に隠れてしまうのを目の端で追いながら、「そんな狭いところに何か見つけたのだろうか」と考えて、
尻尾の形からニュートンだなと判断して、
「ニュートン」と声をかけたのだけど、
妻が怪訝な顔で「ニュートンまだ二階で寝てるよ」などと言う。「あれ、今そこにいたじゃん」と話すと、いないよ、と言い張る。
ととととっと足音がして階段からニュートンが降りてくるのが見えた。
今キッチンで見た気がしたんだけど、気のせいかもしれない、と話すと、
妻がにっこり笑って「ああ、うちにもう一匹黒猫いるんだ。あなたも見たんだね」と言う。
いやいやいや。黒猫いないじゃん。
でも妻が言うには、普段俺が仕事に出かけているときに家の中で見知らぬ黒猫を目にすることがあるのだそうだ。何度もある。「きっと、この土地に以前建ってた家の猫だろうね」としみじみと言うのだがそんなバカな。
話したことはないという。おいおい、猫はしゃべらないだろ。