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日記だよ

日記

週末は実家に顔を出した。母方の祖母への挨拶と、実家に20年間封印されていた書籍の段ボールを検分し処分の道筋をつけたのがハイライトである。

行く道では、五城目町には城があるのを初めて目の当たりにしてテンションが上がっていた。

雪はほとんどなく、異常気象だよ、と何度も繰り返す父親の姿が印象的だった。母親の兄は真っ白な量の多い髪の毛がばっと広がっていて格好いい。自分は父親の方の髪質を継いでいそうだからどちらかというと禿げるだろうな。母親は食欲がめっきり減っている。いろいろ悪いのだろう。

すっかり耳が聞こえなくなった祖母と会話をすると、聞こえてなくても大きな声を発してしまうことがわかった。途中から、こちからしゃべっていると、向こうも聞こうとして身構えてしまうなと気がついた。耳がぜんぜん聞こえていないのに、それでも言葉を聞き取ろうと頑張らせてしまうのは申し訳ないので、途中から黙って筆談と身振り手振りのみでコミュニケーションをしようとしていた。でも気がつくと大きな声で、片言の、子供に向かって話しかけるような言葉を発してしまうことがあった。こちらが口を動かせば、しゃべっていることは向こうにはわかるし、聞こえないことで申し訳なさを生んでしまうだろう、と難しい気持ちになる。「遊びに来てくれて、ありがとうございます。ありがとうございます」と何度も言われた。

すっかりモヒカンの頭を指さして、「若い人の流行りかな。かっこいいな。かっこいいって言われるべえ」と褒めてもらう。これは流行りではなくて、ただバリカンで妻が遊んでるだけなんだよ、などの水を指すような説明をする隙はない。うんうんと頷いておく。A4サイズに印刷した写真をなん度も見返すらしいので、記念写真を撮影して後にした。この写真も息子夫婦の手によって印刷されて、繰り返し眺められるのだろうな、と思う。

実家と祖母の家、両家で飼っている猫が相次いで昨年死んだらしい。どちらの家も、今から新しく猫を飼うか、しかしその前に自分たちが死んでしまうんではないか、という話をしている。集落から人がいなくなっている。私たちもいなくなる。猫を残してしまうとかわいそうだ。それはそうだな。

叔母が自宅で仕込んでいたという味噌や寒こうじをお土産にもらって帰ってきた。田舎の人はなんでも自分で作るな。すごい。