0xf

日記だよ

小野不由美「過ぎる十七の春」

読んだ。良かった。怖かった。

勢い良く読んでしまうのはもったいないものの、緑の我が家が面白かったのでこれは止めどきがない。いやいや。これは傑作だわ。

立派な歴史ある日本家屋とは言わないが和風の古民家を田舎に買ってしまった身としてはリアルな怖さがある。「かるかや」にも通じる家、建物、風景と重なった怖さですよ。猫もいるし。

そして小野不由美の文体めちゃくちゃ端正なのよ。びびる。

転機となる「女」これは恐ろしい響きだとわかる。主人公が聞いてしまって立ち竦む気持ちがわかるのがすごい。読んでる俺もひええとなってしまったし、この言い方だと発話者の関係性が読みきれず、誰がどの立場で誰に対してその恨みをこぼしているのかわからない。読み進めて断片的にわかってくるが、わかってはくるがそれでもやはり読みきれない。途中で挟まれる「私の子供です」「お母さん」のシーンが徐々に詳細化されるのもすごい。

後書きで「小野不由美の怖さの本質は人間が読み解ける程度には超常ではないが、わかったとしても人間が防ぐ手立てを持たないシステマティックな脅威」みたいな説明をされていたがまさにそんな感じだ。「話せばわかる」とか「敵を倒す」といった解決策の取りようがない恐怖の対象をよくもまあ描写するもんだなと。