読み終わった。よかった。
それにしてもこのタイトルのセンスですよ。邦訳の意訳なのかな。どうなんだろう。名作「くらやみの速さはどれくらい」と対置して並べたい。
すごくうまい。他にいうことはない。大掛かりな舞台装置もあるけど、ミステリにおける日常の謎みたいに、我々の現実から地続きな感性の目線で描かれている。余談だけど「わたしのスペースヒーローについて」のマスコミが主人公と親しかったおばさんとの関係性について、「関係に責任を問おうとする」という姿勢についての表現があるんだけど、これはものすごく端的な捉え方だなと感動したりした。
この筆者キム・チョヨプさん、わりとシュッとした女性(著者近影から)で、生化学の博士号持ち、大学在学中にデビューしている。後書きから感じられるのはすごく凝縮された関心ごとの在り方と言葉の選び方。母は詩人、父は音楽家でバリスタとされている。なにそのサラブレッド感...。自分は作者の属性には興味がない、とはいいつつ、これはすごいなあと思ってしまった。