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日記だよ

今のユーザーと未来のユーザー

考えをまとめるためのメモです。

基本的には未来のユーザーの方が、数としてもはるかに多いし、より深く製品にコミットしてくれているんだけど、未来のユーザーは今は目の前にいないので現実感がない。

未来のユーザーは今の市場にはいない。それを獲得するには継続的な戦略が必要になる。

運営チームが今の顧客を満足させることに全力を尽くし、営業チームが今の市場で新しい顧客を獲得し、開発チームが新しい市場展開を可能にする。みたいなきれいな三位一体モデルは、「今のお客さんを満足させる(離脱されない)」ために製品を更新し続けないといけないためになかなかシンプルに切り分けられない。

実際はいろんなことが起こる。

  • 運営チームが今の顧客を満足させるために必要な開発力やサポート力を維持できず離脱が増える。
  • 営業チームがまだ製品の準備ができてないのに新しい市場に手を広げてしまったりしてロードマップが歪む。
  • 開発チームが速度を出せず市場の要求に沿えなかったり的を外したものを作ってしまい市場拡大に失敗する。

運営に力を割くと安定するけど拡大速度は単純に犠牲になる。営業にリソースをかけるタイミングを間違えると準備ができてない製品で手を広げてしまい運営コストが跳ね上がり利益率がどんどん下がる。今は投資だと開発ばかりがんばっても運営が機能してないと適切なフィードバックが得られず明後日の方向に進むリスクが高くなるし早い段階で愛着を持ったユーザーを獲得するメリットが得られない(その間に競合がユーザーを攫っていく)。

シムシティで「住宅、商業、工業」のバランス見ながら都市計画を練ると思うけど同じ趣がある。

開発チームの舵取りは未来のユーザーをどう捉えるかにかかっている。未来にはどういう市場があって、自分たちはどういうポジションにいて、どういう役割を演じているのか、という像があって、そこに対してどのようなルートをとろうとしているのか、というのがある。それは常に仮説に過ぎないのでどんどん変化するけど、粒度があって、今やるべきことが広告システムの刷新なのか、ログインユーザーの管理方法の変更なのか、メール文面のパーソナライズなのか、データベースの分割なのかは足元の話で、もしかして5年後にはスマホは廃れてAR一色になってるかも、とか、生成AIがマンマシンインターフェイスの主流になっていて人々の生活はこのような変化を受けるだろうから我々の製品はこういう使われ方になっているんじゃないか、その時に必要なのはこれだ、とか、氷河期世代が現役のトップになるようになると厭世的な雰囲気が増えそうで顕名SNS廃れそう、とか、そういう大きな仮説も変わっていく。こういう大きな仮説は変動可能性が大きいのでいくつかのシナリオがあるはずで、すると未来のユーザー像も何パターンも存在することになる。

いわゆるスタートアップの強さは、この複数パターンの未来のユーザーに対して絞り込んだシナリオを作ってがむしゃらに走ることができる環境なのだと思う。「小さく初めて小さく失敗する」しかできないリスク回避モードのチームでは速度において対抗できない。10のシナリオが考えられる中で、10のライバルチームが10通りのやり方で全力で走っていく時、完全な失敗を避けようとしてどれか一つに集中することができない側は大きく不利だ。ライバルチームは10のうち8は大きく外して滅びるだろうけど、2は我々の前を走って勝利し、いいポジションを手にいれる。

対抗するには支配的なポジションをとるしかない。あるシナリオを他のライバルが取れないように抑圧するか*1、それとも胴元になるかである。第三の道もある。「なぜか正解を選ぶ」である。無理いうなよ。そこから第四の「選んだ道を正解にする」も出てくる。腕力です。

みんなそういうことは直感的にわかっている。「完全な失敗を避けようとしてどれか一つに集中することができない」状態においては、うまくいった世界の、未来のユーザーたちを詳細に描くことを避ける。未来のユーザーを描くことを避けるということは、未来の自分たちを描くのを避けるのとほぼ同義です。ユーザーという概念は関係性なので、サービスやツールがなければユーザーは存在しないからです。

競争状態でなければ目の前のユーザーに集中するのは正しいことだと思う。競争状態というのはゲームの条件が別のプレーヤーによって変動する状態で、シュンペーターの言ってるイノベーション・変革が起きる。自分たちの優位性を無化してしまう別のプレーヤーが山ほどいる。だから他のプレーヤーと競って、未来のユーザーを引き寄せなければならない。

開発チームはそれを担っている。そう言われると責任重大〜。

*1:先行者利益で得たアセットを前提条件にする、などがそれにあたると思う