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日記だよ

Ash Maurya「RUNNING LEAN 第三版」

読み終わった。なるほどという読後感。読み終わるとスタートアップやりたくなってくる。

ルークは兵器を破壊したいと考えていますが(望ましいアウトカム)、帝国を指揮する悪役、暗黒卿ダース・ベイダーを倒せる力がありません。(課題/障害物) そこで、英雄を導く人物オビ=ワン(あなた)から贈り物であるライトセーバー(製品)を受け取ります。

これ確か前の版にもあったよね。覚えてる気がする。

ソリューションファーストは危険、ビルドトラップに気をつけろ、ということを説明するだけではなく、離陸のストーリーを描いている。大前提として「構築は容易」という世界であることを念頭におく必要があるが、コピーキャットや他の大企業が進出してきてもシェアを守れる優位性についてはあまり説明されていない。この本に描かれているようなやり方で市場ニーズや課題の発見を継続できるなら大丈夫でしょ、ということなのかもしれないし、そこまで面倒見きんわ、という話なのかもだが。

繰り返し描かれる「投資家が好むリスク」とかの構図は、投資家と起業家の負うリスクの性質の違いにもなってそう。起業家は最初の地点と問題を見つける。投資家はそこに資金などを提供してリターンを得る。うまくできてる。

  • 集団思考やHiPPO(高給取りの意見)に支配されないようにしろ
    • この本はけっこう集団思考を避けろ! ってメッセージが随所に出てくる
  • 最低限の成功のラインを設定してそこまでの筋道を描け
    • グロース目標を決めろ、そこから逆算してユーザー数と価格を出せ、それに見合う課題を探せ
    • ここら辺とソリューションファーストへの戒めはちょっと収まりが悪く感じた。まあ最初のソリューション、プランAがつまり初期仮説で、そっから無限に変更していけ、ってことだと解釈。
  • 製品ができたら買ってくれる顧客を見つけろ / お金を出しても解決したい課題を持っている顧客を見つけろ
    • コンシェルジュMVP(最初は自動化されてなくてもいいので一部のユーザーにサービスを提供してMVPとする)
    • 実際にお金を払っているユーザーがいることが投資家への一番大きなアピールポイントになるぜ。
  • 最初はスケールしなくていい
  • 薄利多売より高額商品を企業に売る方が楽
    • 価格がユーザーを決める

本書の中で、建築家にAR/VRソフトを作って売り込む展開があるんだけど、そこで「建築家がクライアントのトレーニングに使えるかもしれないと言っていた」という発見を得るシーンがある。建築家のクライアントの多くは家づくりが初めてで、建築家は本格的な契約や設計業務に入る前にクライアントに家づくりの基本的な考え方や素材、工法などについて理解してもらう時間を使うという。これは自分が家を建てた時の経験からも理解できる。実際に契約を結ぶ前に建築家は多くの時間を使う。住宅展示場に一緒に行って違いを説明してくれたり、工法の違いや木材の性質の違い、什器についての考え方などいろいろ説明を受けた。平面図の読み方とか。そういった知識のインストールは家を建てたことがあればユースケースとして理解できるけど、業務分野の中にいないとわからないことだと思う。そういう、ユーザーが開発者が思ってもいない使い方を発見して喜ぶのは最高の体験だよね。

本書通して一番好きなシーンは以下でした。

メアリー「えー?」

しかしメアリー有能すぎる。