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日記だよ

OVA「天使のたまご」

再視聴。うーん。印象が違う。映像は相変わらず美しくてすごいんだけど、昔みたいに「隠された物語の意図が...!」みたいな感動がなかった。

宗教的モチーフと暗喩が散りばめられている、というのは以前見た時なるほどなと思ったやつで、いろんな人の解説を見たりして、壺や泉、少女から大人への変化、方舟とやまない雨、卵と鳥、十字架のようなものを背負った少年、魚と漁師(?)、解釈されたがってる道具が色々とある。

しかし今回強く感じたのは暗喩を用いて描く絵はどうしても解像度が低くなる、焦点があいづらいのだなということだった。

当たり前みたいな気がするけど、小道具や構図を用いて遠景にぼんやりと浮かび上がらせる表層とは異なる図案は、仕掛けや謎めいた面白さがある一方で、どうあっても情報量や精密さは得られるもんではない。そして天使のたまごは近景となる本筋が大きな軸を欠いていて平坦なものなので、どうしても遠景に意識を向けさせられて、すりガラスの向こうにある物語を読み取ろうとして疲れてしまう。せめて少年と少女の物語に動機や結末が用意されていれば、とか、暗に漂う構図が物語の中の誰かの問いかけに対する答えになっているとか、そういうスッキリした筋書きがあれば...みたいな。

まあ押井守はそういうのをしない芸風というのもわかってるんだけど。切実さだけがあって、その内実がない、みたいなのがなんとなく気になってしまうのであった。