見た。面白かった。この面白さはなんなんだろうな。
司法に優先する暴力の「波止場の掟」に縛られた港町を舞台にしている。友達を結果的に殺すことになってしまった元プロボクサーのテリーが、友達の妹と恋に落ち、波止場を仕切ってるヤクザ的なジョニーの支配を受けながら罪の意識に苛まれ...って筋書きはさておき、なんかそういう湿っぽい話ではない。
美人の妹がテリーに向ける感情は複雑で興味深い。いや、複雑というよりは本能的というか。理屈ではないし簡単ではない。この人はこういうことをしたので許せない、こういうところが好ましい、みたいなのが融合せずに混ざり合っている。兄の死に関わりがあるんじゃないかと疑いながら飯の誘いに応じ、協力してくれないことに激昂して帰る途中でダンスに誘われて大喜びする。兄の死に関わっていたことを告白されて閉じこもっていたら家の扉をぶち破ってきたテリーに「俺のこと好きなんだろ」ってふざけたことを聞かれて「嫌いじゃないけど会いたくない」と答えてしまう。
その一方でテリーの人物造形も不思議な感じだ。屈折の描き方というか。元は才能のあるプロボクサーだったのに、八百長に巻き込まれてキャリアを失ってしまう。兄と2人でヤクザに世話になってる身であり、おそらくは兄との繋がりが唯一の感情的なよすがであり、インテリである兄と違って頭が悪い。港湾で肉体労働をやるしかない。納得はいってないが、長いものに巻かれることに対して諦めはしている。
これは暴力との戦いの映画だが、ラストシーンの労働者たちの笑いはいいシーンだなと思う。